連載エッセイ
Slovakia, Now and Then
スロヴァキアの子供達、絵手紙に挑戦!

November 23, 2000



今年の春頃、スロヴァキア大使館からのご紹介で、日本絵手紙協会のプロジェクトを知りました。

少し前になりますが、長野冬季オリンピック開催にあたって、「オリンピックに参加する選手達に絵手紙で応援メッセージを送ろう」という、絵手紙協会のプロジェクトに、世界各国から数多くの絵手紙が届いたのだそうです。
その中で、群を抜いてスロヴァキアからの絵手紙が多かったそうなのです。どなたかこのプロジェクトをスロヴァキアに広めることに尽力された方がいらしたのでしょう。

今度は「20世紀をふりかえり、21世紀へのメッセージを送ろう」というプロジェクトとのこと。
ということで、私が関係している野迫川村の姉妹校ポッド・レソム校と、啓明学園の姉妹校マーキュリー校に、このプロジェクトへの参加を呼びかけることにしました。

前大使夫人でマーキュリー校で英語を教えているイェラに、絵手紙協会のプロジェクトを紹介すると、「ぜひ参加するわ!」

そして10月下旬、マーキュリー校の生徒10名・先生3名が、啓明学園創立60周年記念式典に合わせて訪問(★訪問の様子はこちらをご覧下さい)。その最終日に、絵手紙教室に参加することになりました。

まずは、筆の持ち方からです。
鉛筆のように持たず、親指・人差し指・中指の3本で筆の上の方を持つこと。そうすると筆先が不安定になりますが、かえって味わいのある線が描けるのだそうです。墨をつけて練習用の半紙に、左から右、右から左、上から下、下から上、円を描き…と筆使いを練習します。

子供達は、練習よりも、早く葉書に本番の絵を描きたいようで、ソワソワしてきました。
それを察して、先生が「じゃあ、葉書に描きましょう。ここにある野菜を取りに来てください」とおっしゃいました。
教卓にはピーマン・バナナ・人参・アスパラガス・はつか大根などが置いてあります。それを描くことになります。

ここで、子供達がスロヴァキア語で何やらブツブツと話し始めました。
「これを描かなくてはいけないんですか?」「他のものを描いてはいけないんですか?」「スロヴァキアでは、自分の描きたい絵を自由に描きます」
スロヴァキア人の先生達も私に目配せして「私たちも同じ疑問を感じるわ。どうして好きなものを描いちゃいけないの?」「絵は、自分の感じることを自由に表現する手段だと思うけど」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇


先生のお話に聞き入る

バナナをひとかじりして描く

(なるほどねぇ…)
日本人の子供達だったら、いえ子供でなくても、きっと先生の言われるままに従うと思います。新しいことを習うのですから、まずは教えられたことを素直にやってみる。「真似ること」から始めることに何の疑問も抱かないと思います。

こんな質問をする受講者はこれまでいなかったのではないかと思います。ちょっと困った様子の先生でしたが、「最初は練習ですから、この野菜たちを描きましょう。そのあとで自由に描くことにしましょう」と言って下さいました。そして子供達も納得して野菜を描き始めました。
まず墨で輪郭を描き、そして、もう一本の筆で顔料を水に薄めて叩くように色を塗ります。和紙なので、かなりにじみます。
野菜を描き終わった子供達は、そのうち思い思いの絵を描き始めました。花や木や鳥や馬や虹、タトラの山も富士山もありました。スロヴァキアと日本の国旗、抽象画も登場しました。次々出来上がって前に貼りだされる絵を見ているのも、なかなか楽しい経験でした。先生も感心してご覧になっていらっしゃいました。

先生の説明では、例えばピーマンなら、ピーマンの芯をよく観察して描き始める。そうすると、芯の部分が自然と大きく描かれることになるので、ピーマン全体は葉書からはみ出てしまうくらいの大きさになる。そして余白に短いメッセージを書き込む。
これが「味わいのある絵手紙」になるのだそうです。
確かに、サンプルとして前の黒板に貼ってある絵手紙は、葉書からはみ出そうな元気いっぱいの野菜ばかりです。

「日常の身近なものをよーく観察して描くんですよ。そうすると、モノに対する愛着が湧いてくるんです。街を歩いていても、今まで気づかなかった名もない花に気づくようになるし、そういう花が踏めなくなるのよ。」

(なるほどねぇ…)
こういう文化、スロヴァキアの子供達は感じてくれたのかなぁ。無邪気に絵を描き続けている子供達を見て、ふとそんなことを思いました。


次々に絵手紙が出来上がって…

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

実は、私も一緒に絵手紙を体験させてもらったのですが、こんなにじっくりとピーマンの芯を観察したのは、もちらん初めてです。ピーマンの芯はきれいな六角なんですね。アスパラガスの芽もとても不思議な形をしていました。
筆を持つのも何年ぶりでしょうか。モノを観察したり絵を描くことに没頭したのは本当に久しぶりです。何だか豊かな気持ちになれました。

この絵手紙プロジェクトは、世界中の人が参加できます。絵手紙協会のホームページに詳細情報もありますし、送られてきた絵手紙はギャラリーで紹介されています。そのうち、スロヴァキアの子供達の絵も掲載されるのでしょうか。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

8月に野迫川村の中学生と一緒にポッド・レソム校を訪問した際、ハシチャコバ校長先生にもこのプロジェクトの主旨を説明したところ、
「今、この時期にとても意義のあるプロジェクトね。子供達に今世紀をふりかえり、そして自分達が担う来世紀に思いを馳せる機会になります。ぜひ参加したいわ!」
ポッド・レソムの子供達はどんな絵手紙を描いてくれるのでしょうか。楽しみに待ちたいと思います。

★日本絵手紙協会ホームページ:http://www.etegami.or.jp/

2000年11月23日記

◇◆◇ これまでのお話 ◇◆◇
スロヴァキアの子供達、絵手紙に挑戦! (Nov 23, 2000)
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