「スロヴァキアの絵本芸術の水準が高いのは、社会主義時代の芸術活動と密接な関係がある…」
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開催中の「ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)」を機会に来日中の、ブラティスラヴァ市立美術館館長イヴァン・ヤンチャール氏の講演で興味深いお話を聞くことができました。
「以前アメリカで講演した時にもプロジェクタがこわれたが、モノがこわれるのはスロヴァキアだけではないんですね」
こわれかかったプロジェクタと悪戦苦闘している様子を見ながらウィットに富んだ講演が始まりました。
美術館は、ゴシック期から現代までの約36,000点のコレクションを有し、中でもイラストレーションは1920年代から現代に至る約5,000点の充実したコレクションを誇っています。その一部の作品をスライドで見せて下さいましたが、その色が多様でやさしく美しいこと、またユーモアのセンスにあふれていることがとても印象に残っています。
BIB展では数多くの日本人が受賞していますが、「私の講演の中で多くの日本人の名前を読み上げる箇所が最も難解なところだ!」と、日本人受賞者の名前をひとりひとり紹介して、BIB展と日本の関係の密接さにふれました。あの安野光雅さんもそのお一人です。
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ヤンチャール氏 左は通訳の関沢明子さん(翻訳家)
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絵本芸術と社会主義の関係とは…
社会主義時代は、政治的緊張が一時的にゆるんだ時期もありましたが、概してイデオロギーに従って制作していた作家が公に受け入れられていました。ただ、中には自らのテーマを持ち自由に制作していた作家達もいて、そうした作家達の活躍の場が唯一「絵本」だったわけです。子供の絵本は、幸いなことに社会主義一色という事態は免れたのですね。
また、1950〜80年代のブラティスラヴァ芸術大学の環境も大いに絵本芸術の発展に貢献しました。ここには非常に創造的な雰囲気があふれていたそうで、《ヴィンセント・フロジュニック》がイラストレーション学科を設立し制作活動が活発に行なわれました。国民的作家である《アルビン・ブルノフスキー》は、「現実と想像の共有」をベースに制作活動をしながら大学で教鞭をとりました。現在のスロヴァキアのイラストレータのほとんどは彼の教え子と言っても過言ではないようです。
そして、日本でも人気の高い《デュシャン・カーライ》は、スロヴァキア人として唯一国際アンデルセン賞を受賞した作家で、現在、若い学生の指導にあたっています。
限られた自由のもとでの、こうした作家達の活動が、BIB展といった意義のある活動へとつながっていったということに、私は感動しました。スロヴァキアの絵本芸術は、「歴史の皮肉」によってその水準が高くなったわけですが、さらに素晴らしいことは、このような活動が国内に留まらず海外の作家達をも巻き込むほどに発展したことではないでしょうか。
この講演会は、(社)日本国際児童図書評議会(JBBY)主催でしたので、その会員である日本の作家や出版関係、美術関係の方々が多くいらしていたようです。中にはBIB展の会場のひとつとなった「ちひろ美術館」の方もいらっしゃいました。
後半の懇親会にはスロヴァキア大使館の領事レシツカさんとご主人のレシツキー氏も出席され、おしゃべりに花が咲きました。
会場には、スロヴァキア作家の絵本が並べられていて、ブルノフスキーの「金のりんご」、カーライの「ふしぎの国のアリス」も展示されていました。ぜひ一度見たいと思っていた作品でしたので感激しました。レシツカさんがその中の1冊を手にとり「これは子供に何度も何度も読んできかせたわ」と、小鳥が主人公のその絵本を見ながら「チンチュラ、チンチュラ」と小鳥の泣き声を真似していました。
現在、日本語で読めるスロヴァキア作家の絵本はわずか5冊程度とのことです。若い世代の人達が、すばらしいスロヴァキアの絵本を日本語に翻訳して下さるのを楽しみに待ちたいと思います。
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左から私/レシツキー夫妻/ヤンチャール氏/関沢さん/
期待の星!ゆずるさんとひろみさん
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スロヴァキアの現代作家グループ「G-POINT」はブルノフスキーの教え子で構成されていますが、確かに作品を見るとブルノフスキーの影響を強く感じます。GalleryNOVAのサイトに、ブルノフスキーと彼の教え子達の作品を展示していますので、ぜひご覧下さい。
実は、ヤンチャール氏は、私の友人ミロ・ゼマンのビジネス・パートナーでした。チェコスロヴァキアが自由化してまもなく、プライベートギャラリーを始めた時の共同経営者だったのです。私が1991年にできたてホヤホヤの彼らのGallery NOVAを訪問したとき、「これまであまり発表の機会がなかった若手の作家を特に西側で紹介する活動をするんだ!」と希望に燃えていた彼らに感動!
「私もまぜてもらおう!」「何かやりたい!」「アジアでの展開は私がやるんだ!」という思いがこみ上げてきました。それがSlovakMallを始めるきっかけになったのです。
今はヤンチャール氏はNOVAを離れていますが、市立美術館で当時の夢を着々と実現しているわけです。 うれしいですね。
そして、彼のような若い人(私と同じ歳!です)が、このような重要なポストで仕事をしていることは、スロヴァキアにとってとても意義のあることだと思います。
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市立美術館のイラストレーションのコレクションは、現在開催中のBIB展に多くを貸し出し中、またイタリアにもかなり貸し出しているようです。海外とも積極的に交流活動をしているようなので、残念ながら常設展としては展示されていないそうですが、スロヴァキアへいらっしゃる時にはぜひ市立美術館へいらしてみて下さい。
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★ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)★
■詳細については、アクティエンタープライズ 小池まで
お問い合わせ下さい。 welcome@akuti.com
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